軽自動車の所有者が亡くなった際、残された家族は相続の手続きが必要になります。
相続放棄をするつもりがなく、軽自動車を売却・継続使用・廃車などの方法を検討しているなら、名義変更や必要書類の準備を早めに行うことが重要です。
本記事では手続きの流れや書類一覧を詳しく解説します。
軽自動車の相続に関する基本知識

相続が発生した際、軽自動車も他の財産と同様に相続対象となります。所有者名義を変更するためには、一定の手続きや書類が必要で、放置するとトラブルの原因になることも。
本章では、軽自動車の相続に関する基本事項を整理して解説します。
そもそも軽自動車は相続対象になる?
軽自動車も相続財産に含まれます。
相続とは、亡くなった人の財産や権利義務を相続人が引き継ぐことを意味します。これには土地や建物、現金、有価証券だけでなく、「自動車」も含まれています。したがって、軽自動車も当然に相続の対象となります。
軽自動車の相続を行わずに放置すると、名義が亡くなった方のままとなり、売却や廃車、継続使用の際に手続きが進まず不利益を被る場合があります。そのため、相続が発生したら早めに対処する必要があります。
まずは車の所有者を確認しよう
車検証で「所有者」を確認しましょう。
軽自動車には「使用者」と「所有者」という2つの区別があります。多くの場合、所有者=使用者ですが、ローン購入などの場合は販売店や信販会社が所有者になっているケースもあります。
車検証を確認すれば、現所有者の情報が記載されており、誰が名義人かすぐにわかります。所有者が亡くなった場合は相続手続きを行う必要がありますが、所有者がリース会社やディーラーである場合、相続ではなく契約解除や引き継ぎの処理が必要となります。
名義変更は15日以内に行う必要がある
名義変更は相続開始から15日以内が原則です。
道路運送車両法の規定により、車の所有者に変更があった場合は15日以内に名義変更手続きを行う必要があります。軽自動車もこの対象に含まれています。
実際には、戸籍の収集や遺産分割協議などに時間がかかる場合も多いため、期限を過ぎても罰則はありませんが、遅延により税金の通知が届かない、売却できないといったトラブルが起こる可能性があります。迅速に名義を変更することが、後々のトラブル回避につながります。
相続の手続きにかかる費用
軽自動車の相続手続きは比較的安価です。
軽自動車の名義変更にかかる費用は以下の通りです。
費用 | |
登録手数料 | 無料(軽自動車の場合) |
ナンバープレート変更費 | 地域により1,500円〜2,000円程度 |
印紙代 | 0円 |
その他 |
書類の取得費 |
普通車とは異なり、軽自動車には移転登録に関する手数料がかからないため、費用は抑えられます。
普通車との手続きの違い
軽自動車と普通車では手続き先と必要書類が異なります。
手続き先 | 必要なもの | |
普通車 |
運輸支局 |
登録手数料 |
軽自動車 | 軽自動車検査協会 |
基本的に無し |
普通車の手続きは運輸支局(陸運局)で行い、登録手数料が発生します。また、車庫証明書も必要となるため、手間や費用が増える傾向にあります。
一方、軽自動車は「軽自動車検査協会」での手続きとなり、登録料も不要です。車庫証明も一部地域を除き不要なため、簡便さでは軽自動車が優れています。
相続された軽自動車は手続きが必要

相続によって軽自動車を取得した場合、用途によって必要な手続きが異なります。
本章では、売却・継続使用・一時保管・廃車など、ケースごとに適した対応方法を解説します。
売却する:名義変更後に売却
相続手続きのあとでなければ売却できません。
軽自動車を相続した後、すぐに売却するには、まず名義を被相続人から自分へと変更する必要があります。
売却時に必要な書類は以下の通りです。
買い手が見つかっても、名義変更が終わっていないと売却はできません。
継続して乗る:自動車保険も名義変更が必要
名義変更後は自動車保険の契約者情報も更新しましょう。
相続した軽自動車を今後も使用する場合、車検証上の名義変更に加え、自動車保険の変更も必要になります。名義が異なると、万が一の事故時に保険金が支払われないリスクもあるため注意が必要です。
継続使用の際には、以下の手続きを行います。
保険の変更も忘れずに行いましょう。
一時的に乗らない:一時抹消登録
乗る予定がない場合は一時抹消がおすすめです。
今すぐ使わないが、将来的に使う予定がある軽自動車は「一時抹消登録」という方法を取ることができます。これにより、自動車税や保険料の支払いが一時的に停止されます。
再び使用したい場合は「中古新規登録」を行えばOKです。
必要書類 | 車検証、認印、一時抹消申請書 など |
手続き先 | 軽自動車検査協会 |
廃車にする:永久抹消登録
二度と使わない車は永久抹消登録を行いましょう。
古くなった車や故障車など、再利用しない場合は「永久抹消登録」の手続きを行います。
これにより、名義は完全に削除され、自動車税や重量税の課税も終了します。
スクラップ業者や解体業者に依頼し、解体証明書を取得した上で手続きに進みます。
軽自動車の相続手続きに必要な書類

相続による名義変更には多数の書類が必要です。
本章では、必要な書類を一覧形式で整理し、それぞれの詳細についても丁寧に解説していきます。
書類名 | 用途 |
自動車検査証(車検証) | 車の基本情報の確認 |
戸籍謄本または法定相続情報一覧図 | 相続関係の証明 |
自動車検査証記録申請書(軽第1号様式) | 所有者変更の申請 |
軽自動車税申告書 | 税務署への申告 |
新所有者の住民票 | 住所確認 |
認印 | 各申請への押印 |
申請依頼書 |
委任状として使用 |
ナンバープレート |
管轄変更時に返却必要 |
希望番号の予約済証 | 任意で希望ナンバーを申請する際 |
自動車検査証(車検証)
軽自動車の基本情報が記載された重要書類です。
車検証には、車両の型式、車台番号、所有者・使用者の氏名や住所が記載されています。名義変更をする際には、現在の所有者が誰であるかの確認が必要です。
相続手続きでは、被相続人が所有者となっていることをこの車検証で確認します。車検証の原本を提出し、申請後には新しい名義での車検証が交付されます。
住所変更や名義変更、紛失時の手続きについても解説
戸籍謄本もしくは法定相続情報一覧図
被相続人との相続関係を証明する書類です。
名義変更には、申請者が正当な相続人であることを示す証明が必要です。以下のいずれかを提出します
後者の「法定相続情報一覧図」は複数の手続きに使いまわせるため、税理士や行政書士も推奨しています。複数の相続手続きを同時に進める場合に便利です。
自動車検査証変更記録申請書(軽第1号様式)
軽自動車の名義変更に必要な標準書式です。
この様式は、軽自動車検査協会が定める名義変更のための公式書類です。新しい所有者の氏名・住所、旧所有者の情報、車両の識別情報などを記入します。
軽自動車検査協会の窓口や公式サイトからダウンロード可能です。記入に不安がある場合は、現地の窓口でサポートを受けることもできます。
軽自動車税申告書
税務署に提出することで、税の更新・申告を行う書類です。
名義変更に伴い、軽自動車税の納付先が変更されるため、軽自動車税申告書の提出が必要です。この書類を提出することで、新しい所有者が正式な納税義務者として登録されます。
申告を怠ると、旧所有者の住所に納税通知が届き、トラブルにつながる場合があるため注意が必要です。
新所有者の住民票
新たに所有者となる相続人の住所確認のために必要です。
住民票には氏名・住所・本籍などが記載されており、名義変更申請時には新所有の身元と所在地を確認するために用いられます。
取得後3ヶ月以内のもので、マイナンバーが記載されていないものを用意しましょう。コピーではなく原本が必要です。
新所有者の認印
申請書類に押印するための印鑑です。
軽自動車の名義変更では実印の登録までは必要なく、認印で対応可能です。ただし、後の売却や登録内容の更新時に実印が必要となる場合もあるため、今後の手続きが想定される方は実印を準備しておくと安心です。
申請依頼書(使用者以外が手続きする場合)
代理人が手続きを行う場合の委任状です。
相続人本人が軽自動車検査協会に出向けない場合は、代理人(家族や行政書士など)が申請を行えます。その際に必要なのが「申請依頼書」です。
この書類には、委任者(相続人)と代理人の氏名、住所、電話番号などを記入し、押印します。認印で対応可能です。
ナンバープレート(管轄が変わる場合)
住所変更を伴う相続の場合はナンバーの返却が必要です。
旧所有者と新所有者が異なる運輸支局の管轄に属する場合、ナンバープレートの返却と新ナンバーの取得が必要となります。旧ナンバーを外して軽自動車検査協会に持参し、新しいナンバーを取り付けます。
ナンバープレートが破損・紛失している場合は、理由書を添えることで手続きが可能です。
希望番号の予約済証(ナンバーを希望する場合)
ナンバーを指定したい場合には事前予約が必要です。
「8888」や「1234」など、希望ナンバーを選びたい場合は、事前に「希望番号予約済証」を取得しておく必要があります。
これは「希望番号申込サービス」等を通じてインターネットから予約することも可能です。予約後、交付手数料を支払い、証明書を申請書とともに提出します。
手続き方法や費用、必要書類などを徹底解説
軽自動車の相続手続きの流れ5STEP

軽自動車の相続手続きは、慣れていない方にとっては複雑に感じるかもしれませんが、以下の5つのステップを順に進めればスムーズに完了します。
STEP1.所有者を確認する
まず最初に、車検証を見て所有者を確認しましょう。
車検証には「所有者」と「使用者」が明記されています。相続手続きの対象となるのは「所有者」です。
たとえばローンが残っている車両などでは所有者がディーラーや信販会社になっている場合があります。この場合、相続手続きではなく、契約解除や所有権解除の処理が優先されることもあります。
STEP2.必要書類を揃える
相続に必要な書類を一覧で準備しましょう。
「軽自動車の相続手続きに必要な書類」で紹介した以下の書類を抜け漏れなく用意してください
書類に不備があると、申請が受理されず再訪が必要となるため注意が必要です。
STEP3.軽自動車協会で登録する
書類が揃ったら、軽自動車検査協会で名義変更を行います。
所轄の軽自動車検査協会に出向き、提出書類とともに申請を行います。予約不要で当日中に完了する場合もありますが、混雑する時期は時間がかかるため、午前中の来所をおすすめします。
受付時間 | 平日8:45~11:45、13:00~16:00 |
持ち物 | 必要書類一式、認印 |
申請内容に不備がなければ、その場で新しい車検証が発行されます。
必要書類や費用相場も
STEP4.ナンバープレートを取り付ける
管轄変更がある場合は、新しいナンバープレートの取り付けが必要です。
相続人の住所が前所有者と異なる運輸支局の管轄に属している場合、ナンバープレートも変更となります。ナンバーが変わる場合は、旧プレートを返却し、新しいものを受け取ります。
希望ナンバーを取得したい場合は、別途「希望番号の予約済証」を用意しましょう。
STEP5.車庫証明書を取得する
一部地域では軽自動車でも車庫証明が必要です。
地域によっては軽自動車にも車庫証明の提出が義務付けられています。都心部や人口密集地が該当することが多いため、事前に警察署に確認してください。
申請には次の書類が必要です。
軽自動車の相続人が1人ではない場合は?

相続人が複数いる場合は、軽自動車の取り扱いについて合意を得てから手続きを進める必要があります。以下のようなケースがあります。
相続人が複数いる場合
まずは遺産分割協議を行い、代表相続人を決定します。
軽自動車を相続する相続人が複数いる場合、どの人がその車を所有するかを明確にする必要があります。そのためには、相続人全員による遺産分割協議を行い、車を取得する人を合意によって決定します。
その後、以下の書類を添付して手続きを進めます。
合意が取れない場合は、家庭裁判所で調停を行う必要があります。
遺言書がある場合
遺言書に軽自動車の記載があれば、その通りに相続されます。
被相続人が公正証書遺言や自筆証書遺言などを残していた場合は、遺言書に記載された通りに相続が行われます。ただし、自筆証書遺言は家庭裁判所の「検認」が必要となるため、即時効力はありません。
公正証書遺言であれば、すぐにその内容を元に名義変更が可能です。遺言書を使用する場合は、以下の書類も必要になります。
軽自動車の相続に関するご相談は軽の森へ!
軽自動車の相続手続きは、一見すると煩雑に思えるかもしれませんが、必要な書類を揃え、正しい方法で進めることでスムーズに完了できます。
本記事では、相続時の名義変更、書類一覧、税理士など専門家の関与が必要なケースまで幅広く解説しました。
しかし、個別の事情に応じた対処が必要なことも多いため、不安な点がある方は「軽の森」までお気軽にご相談ください。プロの担当者が丁寧に手続きをサポートいたします。